3月7日(木)、シンガポールの南洋理工大学 佐藤裕崇(ひろたか)教授をお招きし、中学生対象の「グローバル講演会」を行いました。現在佐藤教授が研究されている「昆虫サイボーグ」、シンガポールの文化や気候、留学先としての充実した環境や南洋理工大学について、パワーポイントを使ってお話いただきました。虫の姿に声を出して驚いた生徒達ですが、次第に佐藤教授のお話に引き込まれていき、目を輝かせて聞き入っていました。あっという間の1時間でした。
質疑応答では1年生から3年生まで質問が活発に飛び交い、大変有意義な講演会となりました。
放課後の座談会では生徒と保護者合わせて30名ほど集まり、佐藤教授の研究内容や、留学した際の英語の勉強法、今後の展望について質問や意見が交わされ、最後は生徒一人一人が、先生に感謝やこれからの意気込みを伝えて、会を閉じました。
佐藤教授のメッセージは、「ワクワクすることを創る」ということです。
研究を始めた当初は、昆虫の行動を制御するという突飛な研究について多くの人から「そんなことができるはずがない」「そんなことをして何の意味がある」と言われ続けていたそうです。「なぜ、多くの人に無理だと言われても、研究を続けることができたのですか?」という生徒の質問に、佐藤教授は「理論的に可能で、そのための技術が私達にはあり、(揶揄・批判する人がいる一方で)協力・応援してくれる人達が沢山いたので、実現できると信じていた」「昆虫サイボーグには小型のロボットとは異なる機能と特徴があるので応用できる場面は想定していた」と断言されました。
また、実現に向けて着実に進んでいて、人を救えるという未来を思うとワクワクします」とも即答された佐藤教授の言葉に、生徒たちはどれだけ勇気づけられたことでしょう。
また、「南洋理工大学の私のチームであれば必ず実現できる」「昆虫サイボーグで人命を救う、という使命を一人一人が抱いていて、研究に打ち込む彼らは必ずやり遂げる」という言葉に、信念を持って研究に打ち込むという、学問を追究する者としての姿勢を学んだことと思います。
「スーパースターでなければ、ニッチを目指そう」という佐藤教授。「ワクワク」を追究して学びを止めなければ、さまざまな分野を行き来して、それらを掛け合わせてニッチ(自分にしかできない事)を創り出すことができる。「小さい頃は昆虫採集が好きでした。けれどそれとは関係ない化学、電子工学、機械工学を渡り歩いています。私はこのどの分野でもスーパースター級の研究者では全くありません。けれど、これら学んできたことを掛け合わせてチームのみんなと共に新しい技術・分野を創り出してきました。毎日ワクワクしています。」佐藤教授の熱いメッセージに、生徒たちだけではなく、教員たちも、胸を熱くしていました。
中学生という時期に、このような好奇心を刺激し、学ぶこころに火を点けるきっかけとなる機会をいただけたことは、非常に幸運なことだと思います。佐藤教授、本当にありがとうございました。
最後に、生徒の感想を掲載します。たくさんの生徒たちが、研究すること、世界で学ぶこと、身近なところから発想して何かを生み出すことについて、深く考えたようです。
・昆虫サイボーグを使って命を救うためにという強い思いでいろんなことに挑戦していることがすごいなと思いました。
・シンガポールの大学ではどんな生徒が多いのかについて詳しく聞くことができて行ってみたいと思った。
・何をするにおいても執念を持って諦めずに行うことが大事だということ。
・昆虫サイボーグを使うことについての批判をどのようにして乗り越えたのか 昆虫サイボーグについての議論や意見など
・普段の生活の中で日常的に溢れるものに新たなアイデアを生み出すことの大切さを教えてもらった。新たなことも思い浮かべて、実際に行動に移す姿がとても参考になった。
・何かと何かを組み合わせることで新たな何かができるということ参考になった。
・身近なものから考え「発展させる」ことが大事だとわかった。
・研究データを数学的に提示することの重要性に気づいた。
・今日の話で、単なる工学の話かと思えば、医療にも発展していて、実際に地震が多い日本にはとても重要な話だと思った。実際今自分が総学で掘り下げている内容も「未来がこういう風になればいいな」という考えから、「自分が実際携わりたい」という考えになったのもいい経験になった。
・最終的には小型ロボットの利用を目標にしているとのことでしたが、昆虫の特性を忠実にロボットに組み込むことはできるのか興味を持ちました。また、昆虫そのものを使うのではなく、人工的に培養して作り出した器官や組織を利用できたら良いのではないかと思いました。
・生物と工学の知識を合わせて人の命を救う、というお話は、将来獣医師になって、生物の研究や保護をやってみたいと思う私にとって、とても参考になりました!
・幾度となくたくさんの壁にぶつかっても諦めずに自分なりに工夫して改善していっている姿が真似したいなと思いました。
・物事の視野を広く持てば色々なことに興味が湧いてくると改めて感じました。
・自分の好きなことを仕事にできていてとても楽しそうだも思ったまた、外国の人とたくさん関わっていてとても楽しそうだな思った。自分の進路について少し考えることができた。
・今、ウクライナで戦争があっているのでこの戦争の救助活動や、火災現場や海上でも使えるようにと聞いて、これからの未来がこの昆虫サイボーグで住みやすくよりよい世界になるなと思い、とても凄いなと思いました。
・海外の学部にはたくさんの種類があってその一つ一つに研究員さんたちの思いが込められているので、海外の大学もいいかなと思いました。
・人間もいつかサイボーグがつけられたりするのかと思いました。
・なぜわざわざ虫を動かすのか不思議に思っていたが、ロボットよりメリットが多いと知って驚いた。使う虫を選ぶ際にも試行錯誤が必要なのだなと知った。