人間は
尊敬されるべきものだ
西光 万吉
みなさんは7月が福岡県の“同和問題啓発強調月間”であることを知っていますか。今月は部落の歴史を学ぶとき大きな意味を持つ「水平社宣言」、この宣言に深くかかわった西光万吉の言葉を選びました。
明治4(1871)年、後に「解放令」と呼ばれる「太政官布告」が出されました。これにより、江戸時代から続いていた身分制度は改められ、差別に苦しんでいた人々も一般市民と同じであるとされましたが、差別の現状は依然として残っていました。
そこで、差別からの解放を目指して設立されたのが「全国水平社」であり、この時読み上げられたのが「水平社宣言」です。
水平社ができる前は「差別の責任は差別される側にある」と差別をされていた側も含め多くの人が思っていましたが、「人間は尊敬されるべきものだ」という考え方は、その視点を大きく変えていったのではないでしょうか。そして、「自分を好きになってもいいんだ。」「烙印を投げ返す時が来たんだ。」と、今でも様々なラベルを貼り付けられ苦しんでいる人たちに対しての呼びかけにもなっていると思います。そのように考えると、この言葉は大きな広がりを持つ大切な言葉といえるでしょう。
お釈迦様は、生まれてすぐに7歩歩いて「天上天下唯我独尊」と宣言された、と伝えられています。この唯我独尊という言葉は、誤解されることもありますが、「我、独(ひとりとして)尊し」との意味で、何かをしたから尊いのではなく、また、他と比べて自分が尊いのではありません。ただ一人、誰とも代わることができない人間として、しかも何一つ加える必要もなく、「いのち」のまま尊いということ、そして“我”とは人間一人ひとりのことなのです。さらに、私たち一人ひとりは今もたくさんの“ご縁(つながり)”の中で生きていますが、目の前の今だけをみるのではなく過去に思いを馳せるならば、“わたし”を支える無限の営みがあるのです。
まさに、「人間は尊敬されるべき」だといえます。
水平社宣言が出されて今年で100年になります。改めて、西光さんがこの言葉に込められた想いを味わってみましょう。
(文責: 宗教科)