2022年4月

自分のことより
ちょっと他人のことを考える
こんな事ができる人を
心豊かな人という

雪山隆弘

   4月のことばは、富山県の浄土真宗本願寺派善巧寺の雪山隆弘(1940~1990)さんのことばです。雪山さんは、学生時代に俳優を目指して演劇活動をされ、卒業後は新聞社に入社してジャーナリストとして、さらにラジオパーソナリティとしても活動をされていました。そして、雪山玲子さんと出逢われて玲子さんの実家のお寺を継ぐために僧侶となられ、「開かれたお寺にしたい」との思いから落語会や、子ども会を開いたりするなどお寺を文化活動の場として開かれました。その中でも雪山さんは、もっと自己表現のできる場を作りたいと児童劇を始められ「雪ん子劇団」を結成して、県内外で多くの公演をされ劇団は35年間の活動を終えました。そして今月のことばは、雪山さんがその劇団の活動を通していつも大切な思いとして心がけられておられたことばです。

   仏教の教えに「自利利他円満」という教えがあります。「自利」というのは自分が幸せになるということであり、「利他」というのは他者にも幸せになってもらうということです。そして「自利利他円満」というのは、自分の幸せ(自らの喜び)が、他人の幸せ(他者の喜び)にもつながり、他人の幸せ(他者の喜び)が、自分の幸せ(自らの喜び)にもなるということで、「世界全体が幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない。」(宮澤賢治)という世界です。この教えは、とても大切なことですが、自分自身を振り返ってみると、私たちは自分が一番可愛い「自我」の思いから自分の幸せ(自分の喜び)を得るために努力はできても、それを後回しにして、他人の幸せ(他者の喜び)のために努力するといことが苦手なものです。しかし、他人のことはほっといて、自分の幸せのみを追求すると、そこはギスギスとした争いの絶えない社会となっていくのではないでしょうか。だからこそ、私たちは自然に「思いやり」や「おかげさま」という心を大切にしようとするのではないでしょうか。   

    改めて雪山さんが大切にされた「自分のことよりちょっと他人のことを考える」とは、ほんの少しの思いやりが自分の心も豊かにし、その思いやりを受けた人の心も豊かになって、お互いを思い合う温かい社会となっていくということではないでしょうか。

新年度のスタートにあたって、ほんの少しの思いやりの心を大切にしてお互いに心豊かな人となれるよう心がけていきましょう。

(文責 宗教科)