散る桜
残る桜も
散る桜
今日の一日を謝して暮らさん
花山勝友 述
今月のことばは、良寛和尚の“散る桜 残る桜も 散る桜”という句をもとに作られた歌です。
「今どんなに美しくきれいに咲いている桜もいつかは必ず散ってしまう。私たちも今この時を謳歌していても、いつか死を迎える時がやってくる」という、無常観を表した句です。この句を詠むと親鸞聖人が得度をされたときに詠まれた歌を思い出します。親鸞聖人が得度しようと青蓮院を訪れた時、すでに夕刻をすぎており、慈円僧正が「今日はもう遅い、明日得度の式をしましょう」と言われました。その時に詠まれた歌が“明日ありと 思う心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは”です。明日があると思っていても夜中に嵐がやってきて桜の花を吹き散らしてしまうように、私たちにも明日があるとは限りません、だから明日と言わず、いますぐに得度の式をしてほしい、今という時間を大切にしていきたいという、意味の歌です。
そして良寛和尚の句や親鸞聖人の歌を、ただ無常観を歌った句ではないと深く味わっていかれたのが花山先生です。無常の世だからこそ、限られた時間を、一瞬一瞬の時を、精一杯大切に生きていかなければなりません。精一杯生きていく中で数限りないご縁をいただき日々を過ごさせていただいています。そんな一日一日に感謝して暮す。それが大切に生きるということです。今月の言葉の「散る桜 残る桜も 散る桜 今日の一日を 謝して暮らさん」は、無常の世だからこそ、一日一日を大切に過ごしていくことを私たちに伝えてくれているのです。
新しい年を迎えました。毛利元就の言葉に「一年の計は春にあり、一月の計は朔にあり、一日の計は鶏鳴にあり」とあります。一年、一月、一日それぞれの最初の時こそが計画を立てるべき時であるということを言ったもので、何事も最初が肝心であるということを意味しています。今年一年間を充実したものにしていくためにも、昨年一年間を振り返り、一日一日を感謝しながら暮らす新たな年の過ごし方を考えていきましょう。
(文責:宗教科)