迷惑をかけずに生きるのは無理
だからこそ「おたがいさま」
朝晩の風がここちよい季節になりました。何をするにも気持ちよく取り組める時節の到来です。
さて、今月の言葉は2つの意味があると思います。
1行目の「迷惑をかけずに生きるのは無理」とはどういうことでしょうか。皆さんは小さい頃に「人に迷惑をかけてはいけません」と言われていませんでしたか?もちろん人に迷惑をかける生き方は良い生き方ではありませんが、果たして私達は人に迷惑をかけずに生きていけるのでしょうか。生まれてからすぐに、家族をはじめ様々な人やもののおかげで大きくなってきました。それを「当たり前のこと」ととるのか、「ありがたいこと」ととるのかで、わたしの生き方がずいぶんと違ってくるのではないかと思います。「当たり前」ととると、「迷惑をかけていない」という考え方になって、そこからは「ありがとう」という感謝の気持ちは生まれてこないでしょうし、それが、自己中心のわがままな生き方につながっていくのではないかと思います。
「ありがたいこと」ととるとそこに感謝の気持ちが生まれ、みんなが「おかげさまで」となり、「おたがいさまですよ」となっていくのではないでしょうか。
2行目の「だからこそ「おたがいさま」」というのは、ここから生まれる気持ち、考え方を言っているのだと思います。
元来「ありがたい」という言葉は、漢字では「有り難い」と書き、「有ることが難しい」が語源で、古典では「めったにない」とか「めずらしい」という意味になります。有ることが難しいことを私のためにしてくれたとか、食べ物として私の口に入ることとなってくれたから「ありがとう」という気持ちが出てくるのです。
現代の世の中を眺めてみると、自分の利益のために人に迷惑をかけても平気であったり、自分がお金を払っているのだからといって、サービスを当たり前のこととしたりする風潮が蔓延している気がします。そうなると人と人との関係がぎくしゃくし、ますます他人のことは知らない、自分さえ良ければ良いとなってきます。
「おたがいさま」や「おかげさま」というのは仏教の「縁起の教え」をわかりやすく言っている言葉なのです。私は様々なものから支えられて生きています(支えられてしか生きていけません)。だから私も他に対して思いやりをもって接しなければなりません。それが世の中に広まれば良いのですが‥。まずは私から私の周りに広げていきたいものです。
文責:宗教科