ミミズだって オケラだって アメンボだって みんな みんな生きているんだ 友だちなんだ
やなせたかしさん作詞『手のひらを太陽に』
2022年2月より始まった、ロシアによるウクライナ侵攻で、すでに1万人以上の方が命を奪われました。2023年10月より始まった、イスラエルのガザ地区侵攻によって、すでに4万人以上の命が奪われました。そのうち、女性と子供たちの犠牲が7割近くに上ると言われています。どちらの侵攻に対しても、世界中の人々が停戦を望んでいますが、いまだ解決の兆しが見えてきません。また、上記の二つ以外にも争いの火種は世界各地に存在しているのが現状です。
争いの原因は、民族の対立、国家の利益を求めた結果、宗教の対立など多岐にわたります。しかし忘れてはならないことは、私たちは、地球という星で共に生きる存在であるということです。
1960年代に、イギリスの環境学者であるジェームズ・ラブロックによって地球ガイア説が提唱されました。これは、地球を一つの生命体としてとらえ、生命と無生物環境が相互に作用しながら地球環境を調節し、生命を維持しているという考え方です。この考え方によると、私たちはすべて、地球という生命体の一つ一つの細胞ということになります。人の身体と同じように、細胞のバランスが崩れれば病気にもなるし、死すらあり得ます。この説を聞いたとき、『仏説阿弥陀経』に説かれている共命鳥を思い出しました。共命鳥とは、頭が二つで胴体が一つの鳥です。片方が右へ行こうとするともう一方は左へ行きたいと言い、片方が飛びたいと言えば片方が休みたいと、その都度反対の意見を持ち、衝突して怒りの念を増長させる愚かな行動を重ねます。体が一つなのに頭が二つあるが故に生じる感覚や思いの違いが様々な葛藤や愛憎を引き起こし、やがて自分自身も滅ぼすという悲しい結末となります。まさに、今地球で起こっていることと同じことではないでしょうか。
今月のことばは、『アンパンマン』で有名なやなせたかしさんが作詞した『手のひらを太陽に』の一節です。一番の歌詞は
ぼくらはみんないきている 生きているから歌うんだ
ぼくらはみんな生きている いきているから笑うんだ
手のひらを太陽にすかして見れば まっかに流れる ぼくの血潮
ミミズだって オケラだって アメンボだって
みんな みんな生きているんだ 友だちなんだ となっています。
“共生”という言葉をよく耳にすることがあると思います。“とも生き”とも呼ばれることがあります。私たちは生かしあう人間であり、自然・動植物、多くの生命あるものと共に生きていることを意味する呼び方です。国家・民族・人種・宗教の対立等、世界は分断されつつあります。その一方で、国家・民族・宗教を越えて手を取り合っていこうとする動きもあります。
私たちに必要なのは他を受けとめ、理解し、手を取り合っていこうとすることではないでしょうか。一人ひとりには世界中の人々を変えていく力はありませんが、家庭内で、地域の中で実践することで、やがてはより広い地域や多くの人々に働きかけていくことができるでしょう。やがては国や民族や宗教の壁を越えて手を取り合い、助け合える社会を作っていきましょう。
(文責:宗教科)