2024年11月

人間が 人間だけでやっていく            現代の問題は そこにある                    

 暑い暑い夏を経て、朝晩の風がここちよい季節になりました。秋は何をするにも気持ちよく取り組める時節です。

 さて、冒頭にも書いたように、今年の夏は記録的な猛暑となりました。福岡県の太宰府の猛暑日(最高気温が35度以上の日)が連続60日となり、日本で一番暑い地域となったのも皆さんの記憶に新しいと思います。「地球温暖化」とか、最近では「地球沸騰化」と言われていますが、その主な原因は、人間が自分たちの生活が便利で豊かになるように、利便性を追求していく過程で生まれたものです。二酸化炭素を大量に排出するとか、森林を伐採するとかしたことが原因です。

 『聞く地蔵と聞かぬ地蔵』という童話があります。ある貧しい村を訪れた僧侶を、村人は手厚くもてなします。そのお礼にと「聞く地蔵と聞かぬ地蔵」の一対の地蔵をもらい受けました。僧侶は「聞かぬ地蔵を大切にするように」と告げ、村を去って行きました。しかし村人は願い事をかなえてくれる「聞く地蔵」に、豊作や、病気が治るようにとか、立派な家屋がほしい、などをお願いしたのです。次々に願いがかなえられて裕福な村になったのですが、そこで満足できないのです。村人たちは、他人と比べだし、「隣の家より大きい家を」とか「村一番の金持ちに」とか、さらには他人の不幸を願い、「向かいの家族を病気にしてくれ」となっていくのです。隣近所は仇同士になってしまいます。その混乱する村に再び僧侶が訪れ、「聞かぬ地蔵を大切にするように」と言った真意を伝えました。村人たちは自分たちの行いを恥じたということです。

 満足できない欲望を「のどの渇きに海水を飲むごとく」と言われますが、仏教は、わたしたちの欲望の深さとおろかさ、その危険なことを教えてくれます。三毒の煩悩の一番は「むさぼり」です。「人間が 人間だけで」自分たちの生活のために、欲望のままに地球を破壊していけばどうなるでしょう。原因を作った人間が滅ぶのは致し方ないとして、他の生き物も犠牲になるのは、申し訳ないことです。  世界では温暖化ストップに向けて、様々な取り組みがなされています。その視点に、「人間だけでなく、すべてのいのちは大切で、かけがえのないものである」という仏教の根本精神は欠かせないと思います。そして、私たちかできる、電気や水の無駄遣いをしない、食べ物は残さないなどの、小さなことでも行動ににうつしていかなければなりません。

(文責:宗教科)