こころは見えない
こころづかいは見える
お釈迦様が、食べ物には4種類あると説かれました。1つ目が口から入る食べ物で、私たちの血や肉となり、身体にエネルギーを与えてくれるものです。2つ目が眼から入る食べ物で、美しい景色や絵画などは感動を与えてくれます。3つ目が耳から入る食べ物で、思いやりの言葉や、美しい音楽やノリノリの音楽など、これも感動を与えてくれます。そして4つ目がこころから入る食べ物で、他者からのこころづかいを受けたり、愛されたりすること、信じられることによって、私のこころが豊かになります。そして、「どれも世の恵みによって私たちを生かしてくれている大切なものだけれど、特に4つ目のこころから入る食べ物から、前向きに生きる土台を与えてもらうのです。」と言われました。
私事ですが、息子が、ホームレスの方々が社会復帰するための支援施設「抱撲」に3年間勤めていたときの話をしてくれます。「ホームレスの方々は、対人関係が原因で心身を病んでいる方が多く、なかなかこころを開いてくれないから根気がいる。でも親身になってお世話をしていると、少しずつ話をしてくれるようになる。そして最後に必ず言われるのが、『私は今まで、他人からこんなに思われたことはなかった。だから人のことを信じることができなかった。やっと人を信じられるよ。ありがとう。』という言葉だそうです。そしてまた、私の息子もこのようなホームレスの方々の言葉から、仕事のやりがい、ひいては生きがいをもらっていたのだと思います。
少し前の話ですが、学校の近所の通学路にあるお家の方が、道沿いにプランターを数個置いて、花を植えておられたそうです。本校の高校3年生が、卒業間近になって、そのお家を訪ね、自己紹介をし、「3年間、いつもこのきれいなお花を見て通学していました。勉強がうまくいかずに登校が辛い日もありましたが、このお花を見て勇気づけられていました。もうすぐ卒業するので、お礼を言いたくてお訪ねしました。3年間本当にありがとうございました。」と言ったそうです。近所の方はその行為と言葉に感動して、本校にわざわざお見えになり、お話しくださいました。そして「そんな風に思ってくれていた生徒さんが1人でもいらしたことが大変うれしかった。これからも続けていこうと思います。」と言われました。
少しの「こころづかい」が回りを暖かくし、自分もこころ豊かになれるのです。今月の言葉にあるように身の回りへの「こころづかい」から、少しの勇気をもって始めてみたいものです
(文責 宗教科)